昔の野球といえば“カツッ、カツッ”という金属音
グラウンドに響く、あの硬い足音。
ベンチに戻ってくる選手が立てる「カツン」という金属音を聞くと、
野球ってこういう音だったよな、と懐かしくなる。
でも——なぜスパイクは金属が当たり前だったのか。
実はそこにも、野球の特性と道具の進化が深く関わっている。

当時は“土のグラウンド”が主流だった
昭和〜平成初期、ほとんどの学校・球場は土のグラウンドだった。
クッション性も摩擦も人工芝ほど均一ではなく、
土が乾けば滑りやすく、雨が降ればぬかるむ。
そこで求められたのが、
しっかり地面を噛む強いグリップ力。
その役目を果たしたのが金属スパイクだった。
金属スパイクは“刺さる・抜ける”が速い
金属スパイクのメリットは単純で、しかし非常に重要だ。
地面に刺さる力が強い
刺さった後の“抜け”が速い
ダッシュ、止まる、切り返すが鋭くなる
走塁、守備、投球動作——
どれを取っても、野球という競技は瞬間的な加速と停止の連続だ。
そのため、「刺さるのに邪魔にならず抜けも早い」金属は、
土グラウンドに最も適した素材だった。
革靴ベースの文化も影響していた
もうひとつ見逃せないのが、
野球スパイクのルーツは“革靴”だったという点だ。
初期の野球用スパイクは革底に金属ポイントを打ち込んだ構造で、
金属を使う文化がそのまま引き継がれた。
グラウンド事情だけでなく、道具の伝統としても金属は自然な選択だったわけだ。
人工芝の普及で時代が変わった
現代では、人工芝や安全性の問題もあり、
金属スパイクが使えない球場も増えた。
その結果、
樹脂製スパイク
ブレード型ソール
金属と樹脂のハイブリッド
など、軽量で安全性の高いモデルが主流になりつつある。
しかし、プロ選手の中には、
「金属のグリップ感じゃないとダメ」という人も多い。
いわば、**プレーの感覚を支えてきた“道具の記憶”**が生きているのだ。
今日のミニ雑学
●昔は土のグラウンドが多かったため、強いグリップ力が必要だった
●金属スパイクは「刺さる・抜ける」が速く、動きが鋭くなる
●革靴スパイクの伝統も金属文化を後押しした
●現代は安全性・環境の変化で樹脂系が主流に移行しつつある

