昭和の録音といえば“赤いRECボタン”
昭和のラジカセといえば、
銀色のボディにずらりと並んだメカニカルなボタン群。
その中でも特別な存在感を放っていたのが、赤いREC(録音)ボタンだった。
ただ、この録音ボタンは単独で押せず、
必ず**「録音ボタン+再生ボタン」**の“二度押し”が必要だった。
あの不思議な操作──いったい何のためにあったのだろう?

録音は「上書き」が命取りだった
当時の記録媒体はカセットテープ。
一度録音すると、その部分の音は完全に上書きされて消えてしまう。
だから、もし録音ボタンを誤って押してしまうと
「大事に録ったラジオ番組が消えた…」
「お気に入りの曲の上に変な音が入った…」
なんて悲劇が普通に起こる。
これを防ぐため、ラジカセには
**「誤操作を防ぐ安全装置」**として
録音ボタン単体では作動しない構造が採用されていた。
“二度押し”は安全の合図だった
ラジカセの録音機構は、
内部のメカを明確に「録音モード」に切り替える必要があった。
録音ボタンを押しただけでは作動せず、
必ず再生ボタンと同時に動かすことで“本気で録音する動作”になる。
つまりあの二度押しは、
●本当に録音する意思があるか?
●誤操作じゃないか?
を確認するための安全プロセスだったわけだ。
なぜ再生ボタンと組み合わせたのか
録音は「テープを録音速度で回しながら」行うもの。
そのため、録音開始には再生モードと同じ駆動が必要だった。
● **再生ボタン:**テープを一定速度で走らせる
● **録音ボタン:**再生機構+録音回路を同時にONにするスイッチ
この二つを同時に押すことで初めて“録音状態”が成立する。
単純ながら非常に合理的な設計だった。
さらに「誤録音防止」ダブル構造もあった
カセットテープには、裏面に
**“爪(ツメ)”**と呼ばれる小さな出っ張りがあったのを覚えている人もいるだろう。
ここを折ると、ラジカセは
「このテープは上書き禁止」と判断し、
録音ボタンを押しても反応しなくなる。
●二度押しのメカ構造
●カセットの録音防止ツメ
この二重の仕組みで、昭和の録音文化は守られていた。
時代が変わっても残る“二度押しの記憶”
デジタル録音が主流になった今、
誤って上書きされる心配はだいぶ減ったが、
あの「ガチャッ」と押すラジカセの感触は、もう体験できない文化になった。
指先に伝わる重みと、録音ランプの赤い光──
録音という行為が、今よりずっと“特別”な時代だった。
今日のミニ雑学まとめ
録音は“上書き”が避けられないため、誤操作防止が必須
そのため録音ボタンは単独で押せず「録音+再生」の二度押しに
再生機構と録音回路を同時に動かす必要があった
テープの“録音防止ツメ”と合わせてダブルの安全構造だった

