昭和のテレビに“ウッド調フレーム”が多かった理由 — 家電が“家具”だった時代のデザイン事情 —

昭和のテレビといえば“木目”だった

昭和のテレビを思い出すと、まず目に入るのがウッド調のフレームだろう。
本物の木だったり、プリントされた木目シートだったり。
今の薄型テレビのスマートな黒とは対照的だ。

でも、どうして“木目”だったのか?
実はそこには、昭和ならではの暮らし方とデザイン思想が深く関係している。

テレビは「家電」ではなく“家具”だった

昭和30〜40年代、テレビは一家の大きな買い物。
買えば10年以上使う“主役級”の家財道具だった。

そのためメーカーは、
ちゃぶ台・箪笥・座卓など、日本の居間に馴染む色と素材を選んだ。
つまりテレビは“黒くて無機質な機械”ではなく、
部屋の景観を壊さない家具の一部として扱われていたのだ。

木目調は、畳の部屋や木の柱、和家具と相性がいい。
どの家庭にも自然に溶け込んだ理由はこれだ。

本物の木が使われた時期もあった

初期のテレビには、本物の木のフレームが使われていた時期がある。
加工しやすく、衝撃にも強く、見た目も重厚感が出せた。
しかし量産が進むと、
より軽くてコストの低い木目プリントシートが主流になっていく。

それでも見た目は“家具風”。
それが当時の“テレビらしさ”でもあった。

“ウッド調”は画面の見え方にも一役買っていた

実は木目は、
ブラウン管の黒い画面を引き立てる効果もあった。

ブラウン管はガラス越しに光を放つため、
周囲が明るすぎると白浮きして見えづらくなる。
木目の落ち着いた色は視界を邪魔せず、
画面への集中を助ける“視覚的フレーム”でもあったわけだ。

薄型テレビの時代になり“木目”は消えた

平成に入り、液晶テレビが薄型・黒フレーム中心になっていくと、
ウッド調は一気に姿を消す。

薄型テレビは“家具ではなく電子機器”として扱われ、
デザインの対象が「家全体」から「テレビ本体」へシフトしたからだ。

ただ、最近はレトロブームで
木目パネル風のスピーカーや家電が復活しており、
昭和のデザインがまた新しい形で注目されている。

今日のミニ雑学まとめ

●昭和のテレビは、部屋に馴染む“家具の一部”として木目だった

●初期は本物の木、後期は木目プリントが主流

●木目フレームは、ブラウン管の映りを良くする視覚的効果もあった

●薄型化とともに木目は廃れたが、レトロ家電として再注目されている

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