昭和ラジオといえば“横長のチューニング窓”
昭和のラジオを思い出すと、
本体の上部か中央に、細長く伸びた“横長のチューニング窓”があった。
周波数の数字がずらっと並び、針が左右にスーッと動く、あの独特の風景。
でも、なぜあの窓は“横長”ばかりだったのか。
実はそこにも、昭和の技術者たちの確かな理由があった。

周波数が横に並ぶほうが、人間が読みやすい
まず大きな理由は、
「周波数を左→右で並べるほうが、人が直感的に理解しやすい」
という点だ。
昭和の標準的なAMラジオは
周波数が低い方から高い方へ“横方向”に昇順で並ぶ設計が主流。
理由はシンプルだが効果的で、
視線を上下に動かすより、左右に動かすほうが圧倒的に読みやすい。
特に、小さな窓の中で数字を追うときはその差が大きかった。
“微調整のしやすさ”が横長窓の真骨頂
AMラジオは電波をつかむ際、
ほんの少しダイヤルをずらすだけで、
音がクリアになったり雑音が出たりする“繊細な世界”だった。
横長窓にすることで…
●針の動きが細かく見える
●微調整の精度があがる
●狙った局が見つけやすい
というメリットが生まれる。
特に、早朝や深夜に遠くの局を受信するときは、
針のわずかな動きに命がかかっていた(大げさではなく、当時の楽しみだった)。
構造上も“横長”が作りやすかった
昭和のラジオ内部には、
**バリコン(可変コンデンサ)**という“回転式の部品”が組み込まれていた。
この部品は、ダイヤルを回すと
内部の羽が開いたり閉じたりして周波数を合わせる仕組みだが、
この動きと針の軸が自然と“横方向に連動”しやすかった。
つまり、
中の構造も横長窓との相性がよかった
という、技術側の事情も大きい。
デザイン面でも“横長のほうが様式美”だった
昭和のラジオは、木目調やメタルフレームが多く、
横に広がるチューニング窓は、全体のバランスを整える役割も担っていた。
縦長にすると目立ちすぎるが、
横長なら程よい存在感で、本体デザインを引き締めてくれる。
実際、昭和後期のポータブルラジオでも、
横長レイアウトは長く採用され続けた。
今は消えた“横長の窓”という文化
デジタルチューナーや液晶表示が当たり前になった今、
横長の針窓はレトロ家電の象徴のようになってしまった。
しかし、あの細い窓に映る針の動きには、
“電波をつかまえている実感”があった。
昭和のラジオは、
技術と生活がぎゅっと詰まった、ひとつの文化だったのかもしれない。
今日のミニ雑学まとめ
●横長窓は、周波数を読みやすくするための工夫だった
●AMラジオは微調整が命 → 横方向の針は細かい変化が見やすい
●内部の構造(バリコン)とも相性が良かった
デザイン面でも“横長のほうが美しい”という意図があった

